朝霧

ひこうき雲

 海を抱え山を背負っているこの街は霧の深い街でもある。昨日の朝も、今朝も朝霧が深かった。人は朝一番の目覚めの風景でその日を感じ取る。霧の朝は気配を消してしっとりとしている。今日は試験二日目。この三年間の思いが実ることを祈る。
 アイルランド狂詩曲を久しぶりに聞いている。切なくてしみじみと胸に迫ってくる。小さな国だがこの国は大きな悲劇を内に抱いている。そして美しい・・。かつて民話を調べたことがあるが打たれ強い国民性であると思った。情緒に流されずに実利を取るたくましさも持つ。国を出て大陸に移住しても、民族の血と心を子供たちは生きている。この強さは男たちが守り、女たちがはぐくんだものだろうか。霧は晴れて行き、空はうす曇に変わった。今日という日が、心安らかな一日でありますようにと祈る。