耐える・切り替える・引きずらない

ウイスキー・文旦・ピーマン・布

 オリンピックを見ていて、私は何を期待してこれを見ているのだろうかと思った。ふと気になったので、自分の心の中を覗き込んでみた。そしてあることに気がついた。私は勝者を見ていたのではない。負ける人、その負け方、負けたときの表情、そしてその後の行動を見つめている。如何にその困難と失望を乗り切って次につなげてゆくのかその切り替えの姿に向き合っていたい。なんとけなげに人は向かってゆくか、そのすさまじい気力にひきつけられる。
 これだと思う。この気力があるかないか。私も崩れそうな自分をもてあますときがある。何もかも投げ捨てたいと思うことがある。こんな私でも投げ出す寸前で思いとどまることができるのは何かがあるからだろう。それをもっとはっきりとしたシンプルな形で表してくれるのがスポーツだ。オリンピックはいろいろな競技、いろいろな人種、いろいろな立場の人がつぎつぎと目の前に現れる。しかも一度は勝利者となって国の威信を背負ってここに出てきた人たちが、最後の一人になるために全力で戦う。そしてそこにひとりの勝利者と沢山の敗者が生まれる。そのすさまじい姿の中に、大切なことが見えてくる。人が自己の限界に挑戦してなお敗れたとき如何にその負けを受け入れて自分を保ってゆくのか。圧倒される。言葉ではなく身体全体でそれは表現されている。なんと美しいことか。胸に迫ってくる。
 今できることを、今すべてをこめてやってみて、それで敗れたとしても悔いはない。そんな単純なものではないと思う。にもかかわらず、しなやかに、諦めない姿はもう一歩前に進もうという勇気を感じる。それがたまらなく好きだ。