たった二ヶ月で

真っ白

 その人は、話ができなくなり、目が見えなくなり、耳が聞こえにくくなり、声が出にくくなった。表情がなくなり・・・まるで別人になってしまった。とても担当が替わることをいえなかった。それでも、私だと分かると「にんまっ」と笑った。うれしかった。私だと認識してくれた。
また来るからね。待っていてくれる?
と言ったものの、もう一回しか訪問できない。だますようで私は悲しい。もうそんなに長くは無いのだから、このまま担当させてくれたらいいのになあ・・・と心の隅にわきあがる思い。
 入院・退院・入所・・・に伴うこの二ヶ月間の空白、環境の変化がこんなにも大きな状態の変化をもたらしてしまうのか・・この時期に、信頼感に支えられたゆったりと人間らしいかかわりが沢山あったら、こんなにも沈黙の世界に後退しなくて済んだのではなかろうか。同行の職員と呆然として帰ってきた。守ってあげられなかった無力感・・・やりきれない。