心が帰る場所

空に跡をおいていく

 記憶をさかのぼってゆくと、懐かしいと感じる風景がある。日常生活の中でゆとりを失ったときに、無性に戻って行きたくなる時代・場所・人間・におい・光・・・・感情を伴うこともあるし、音を伴う場合もある。なぜそこに戻ってゆくのかという理由は分からない。むしろ分析は必要は無い。ただ静かにその感触に浸り、漂う。ゆっくりと味わう。
 この時間を持っている人は折れにくい。圧迫されてもへし折られることは少なく、たわんでじっと耐えることができる。自分のサンクチュアリを守っていることが生き延びるためには必須条件であると思う。逃げ込んでも叱責されない場所を失ったら、吹きさらしの中に立っている状態になって窒息してしまうか、崩れてしまうかしてもはや制御ができなくなってしまう。われを失う前に、まず自分の安全確保の必要を思う。
 周りの大人によってその場所を取り上げられ、破壊され、支配されている時間を長く持ったことがその人の生きる力を損なっているようにも思う。子供たちは壊れるのではなく、壊されてゆくのだと私は感じている。