リバティプリント

 この布が大好きだ。先日販売しているお店に値段を確認しに行った。メートル3000円くらいで手に入る。製品になるとブラウス一枚で10000円と値が張るのでいっそ布を買ってきて自分で縫ってみたいと思った。無性に手作りの衝動に駆られる。セーターを編みたいとか服を縫いたいとか、大した技術もなく独学で不器用でと並べ立てても、その気持ちは湧き上がってくる。
 季節の変わり目なのだなあと思う。そんな年齢に差し掛かったのかなあとも思う。手作りで子供を育てた。子供達が幼かったころ今の季節はセーターを編み、シャツを縫う季節だった。そしてあのころの私は忙しくはあったけれど、自信と若さに満ち溢れていた。生きていることが嬉しかった。あの日々は、子供達の明日に何の不安もなかった。お腹を満たし、暖かく暮らし、一緒に遊ぶ。その一日一日の何と輝いていたことか。疲れ果てて、読み聞かせをしながら子供達と一緒に添い寝をするとき、私は限りなく満ち足りていた。
 あの日々の記憶が手の仕事の中に残っているのだろう。娘達に縫った素朴なブラウスをまた縫いたい。息子達のスキー用に編み込んだノルウエイセーターをまた編んでみたい。そんな気持ちなのかもしれない。子供達は既に私の手の中にはいなくなってしまったのに。ふと、毎年ターシャが家族のために編み物を冬仕事にしていたことを思った。私もそんな年齢に近づいているのだなあ。うーんリバテイプリント。
 せめて自分のために編んでみようか。縫ってみようか。優しい気持ちが蘇ってくるならば・・・