うううう・・・さむ

盛岡白百合黙想の家

 さすが盛岡。寒さが違う。空気がカーンとカタカナでそこにいる。この街が好きなのはこの厳しい空気があるからだなあと改めて思う。上の橋も、中津川も、北上川も、岩手山も何も変わらない。ただ街がひっそりと寂れていくなあと感じさせる。なじみの小さなお店がなくなっている。道が変わっている。空き地になっていたり、駐車場になっているこの場所に何があったのか、幾ら思い出そうとしても思い出せない。
 ここにかつてわたしの時間が流れていた。子供達が育っていった。山は変わらず、川は変わらないのにわたし達家族は変わってしまった。こうやっていのちは旅を続ける。立ち止まることは人間には許されてはいない。今この時間が次にどのような結果をもたらすのかも分からない。それでもきっとよきものがここにあるのだと信じてわたし達はこの旅を続けてゆく。
 北の街に生きる人の静かなたたずまいは決して甘えを許さない風土の中で練り上げられたものだろう。惹きつけられ、いつか自分もその群れに加えられる人間性をもてたならと願う。