秋晴れの凄い空

 仕事を終わってこんな日は何か自分の中でわくわくするようなことをしたいと思う。ちょっとしたドライブとか、洒落たお店をのぞくとか花を買うとか・・・
気持ちの中に、さっきクライエントと交わした会話が残っている。


 baba「もうすぐ83になる。ふるさとに帰りたいけれど、弟に断られた。親のお墓には入れてあげるけれど、骨になる前には来るなって」


私「そうか。弟さんも家族があるからしょうがないかもね」


baba「昔私は嫁さんをいじめた。馬鹿だった。その報いを今受けているんだねえ・・・」


私「そうか。若い時は先のことを考えられないからね。」


baba「嫁に実家に帰れといった。帰るといったから、送って行ってやるとまで言った。でも夫婦別れになるよりはお前が出ろといわれて家を出た。それから帰ったことが無い。しかたがないねえ」


私「そうか・・・じゃあここで頑張ってみますか?」


baba「一人で暮らせなくなったら施設にはいるよ」


私「じゃあ出来るだけ楽しく暮らせるようにここで頑張ってみますか」


baba「よろしくお願いします」


その日は最早そう遠い先のことではない。いじめたから仕方が無い。自分の若い日のことを鮮明に覚えているらしい。めぐりめぐって老いの日にその付けを支払う。なんだかむねがきゅるきゅるする。皆死んでゆくのだもの、どこかで許しあって優しい気持ちで死んでゆくわけには行かないのだろうか。
 よろしくといわれても、私に出来ることは経済管理と諸手続きと心のケアだけなのだよ。悲しいけれどいつの日にかそんなものは何の役にも立たなくなる時が来るんだよ。その時あなたの手を誰が握り締めてあげるのだろうか。考えてしまった。