嘘でしょう

カテドラルのマリア

 思いもかけないことで、同一区内の移動でありました。単身赴任は夢のまた夢・・・バス停で数えられる程度の異動でありました。ふううう・・・・神ならぬ身の知る由もなし。これは経済的には吉。夫婦の危機は回避され、親子の断絶は免れ、だけどばかばかしくも遠距離と同じ引越しは引越し。これから業者に日程と行き先を告げ、粛々と作業を続行いたします。もう・・・気が抜けてしまった。いずれにしてもピアノは一旦ふるい落とさなければこの次の引越しに困るので今回麦ハウスに送ることにした。
 あんなに必死で探し回ったマンションは・・・先送り。正直に言えばもうここいらで見切りをつけて退職するのではないかと思った時期があった。いくらなんでも心の準備が出来なかったのでせめてもうすこし時間が欲しい。この一年で新しい生きる道を整えようと思った。姫は高校がもう二年残っている。それから大学が4年。そこまでは何とかこの街で私達らしく生きたいと思う。
 息子が亡くなったとき、もしもっと前にこの職を離れていればもう少し家族としてのゆとりがもてたのかもしれないと思い苦しかった。同じ思いは繰り返したくはなかった。あの時は病人を抱え身動きが取れぬまま生きていることだけで精一杯だった。そしてしばらくたって今度は親分が大きな病気をした。しみじみと,この人は死ぬまで子供のために身を粉にして働くのだろうかと悲しくなった。
 あと一年私達はじっくりと自分達のこれからやりたいことを考えしっかりと地図を描こうと思っている。折角頂いたいのち。燃やし尽くして死を迎えたいではないか。