お昼

そろそろ新米の季節。我が家はまだまだ新米までたどり着かない。来月の半ばにならないと注文したおコメを食べつくすには至らない。いつもの年なら何とか手を尽くして新米で美味しい「ダマコ餅」を作って鍋を楽しんでいるはずなのに今年は何故か食べることに気が向かない。今日は今月でたった一日だけ日中が空いている。ゆっくりと本を読んだり手紙を書いたりして過ごしている。試験期間なのでなにもなければ姫もお昼には帰ってくると思う。二人で美味しいものでも食べに行こうか。ふと思う。あの子ともっと一緒に居られたらどんなに嬉しかっただろうかと。いつもここにいないもう一人の事を思い続けている。秋が来るのは辛い。季節のめぐりはあの子のいない時間を体で教えてくれる。こんなにも遠くへ来てしまった。
 気持ちが苦しくなるとふと頭の中をよぎる風景がある。森の中に一軒の家があってその窓に明かりがともっている.部屋の真ん中にテーブルと椅子があって側にストーブがあってストーブの明かりが部屋に満ちている。空が段々濃い青に変わってゆくがその部屋は益々暖かく明るい色に包まれてゆく。いつか私はあそこにたどり着く。そしてあの椅子に座りあのテーブルにノートを広げて文字を書く。人間の姿は出てこない。誰もいない空っぽの部屋になんでこんなにも懐かしさを感じるのだろうか。ハリーポッターを見たときハグリットが一人小屋に済んでいるのを見て一瞬「仲間」だと思った。どこかで私の心に刷り込まれた私のサンクチュアリ。あの森は何処にあるのだろうか。