昨日の単位認定試験のことを

凧揚げ。姫と大将

書いたはずの日記が消えてしまった。きっと公開してはいけないことだったのだろうと思う。昨日大学院の単位試験だった。その教室に、なくなったギュダの学校の学生たちが来ていた。彼らの学校と私の所属している大学の間に授業提携があって単位が認定されるためにこちらの授業を受けその認定単位を組み込むことが出来る。あの子が居たあの学校のにおいがした。理系のあの学校独特の雰囲気が学生控え室に充満していた。たまらなくなった。耐え難かった。
明日もこの子達の姿を見るのかと思ったら萎えた。院の単位認定試験は人数が少ないから一つの教室で試験を受ける。控え室も自習室も数が少ないから逃げようがない。
 今はまだあの子達と同じ空気を吸って時間を過ごすことは私には無理なのかもしれない。立ち直ってきたと思い、何か動き出そうと思い、遺族サポートの仕事をカウンセラーとして支えてきた。親を相手にしたときは私は大丈夫だった。ところがあの子の通っていた学校の学生の集団を見たとき、彼らの会話を聞いていたとき、あの年齢の男の子たちの私も知っている教授とのやり取りや、実験や、理論の屈託のない会話を聞きながら「何で此処にあの子が居ないのだろう」と思ってしまった。「私の息子はもう何処にも居ない」コレが現実だ。
 切なくて切なくて・・・・まだ立ち直っては居ない、一生懸命に堪えている自分を見た。今は無理しなくてもいいよと思った。いつか「此処にあの子が居たらねえ」とおだやかに思えるときが来るまで、もう少し時間が過ぎるのをまとうと思った。
 ぼんやりと夕方の街を歩いた。そして自分の乗るべきバスではないバスに乗ってしまった。方向が同じなので近くまで行ったら降りようと思った。あの子が通った小学校の前の停留所で降りた。あの子が通った通学路を歩いた。あの子によくお使いを頼んだ小さな食料品店に入って長ネギとお味噌を買った。家の近くで乗るはずだったバスとすれ違った。もしかしたら間違ったのではなくて、私はこうしたかったのかもしれないと思った。もうすぐあの子がなくなって1000日がたつ。本当はまだ試験どころではない自分の心を改めて感じた。