大雪のドキュメントを見た

こだま観察会

NHKスペシャルで大雪のドキュメントを見た。昔子供の頃親戚が農林省に勤めていて上小阿仁村に住んでいたことがあった。夏休みに遊びに行った事がある。街場にしか住んだことがなかったから山に抱かれた暮らしぶりが面白くて大好きだった。叔父は国家公務員なので村の人達とは別格で距離を置いて暮らさざるを得なかったようだがそれでも筍採りや山菜茸の自家製缶詰の楽しみなどあったようだし、何よりもここはまたぎの発祥の地といわれている。ハンターだった叔父にすれば天国だったと思う。熊をあそこで何頭しとめたことだろうか。夏休みに遊びに行ったら仔熊が飼われていたこともあった。ツキノワグマだったがなんて可愛いんだろうと思った。
 TVに映し出される映像は無残に雪に押しつぶされ苦悶する老いた人々と寂れた集落の様子だった。ラストシーンで衛星電話を雪降り積む外に引っ張り出して、現在の安否確認を村役場に電話する82歳の集落の責任者の姿が切なかった。
 雪国に住む定めのゆえに背負っている過酷な日常を過酷ではあってもこよなく愛し守ろうと命がけで耐えている姿は、人間が生活するってこういうことなんだと思い知らされる。自分が祖先から託された家屋を守り、生活を守り、集落を守り。周りの人間にすれば命あっての物種でしょうと思っても、失われてしまったものを再建する力を持たなければ、命がけで失われない事をするしかない。守るしか生きるすべがない。守るものなど自分と家族の命くらいしか持たない私にはこの壮絶な重荷はただただ感服するほかない。
 引き継ぐべき有形無形の先祖からの遺産を持たぬ我らサラリーマンは何と自由でたわいなく生きられるものだろう。心の中にのみ守るべきものを持つ生き方をこそ我があり方とキモに命じる。物にもお金にも人にも執着を持たず生きていたいと願う。幸いにしてそれすら持たぬわが身なれば。