本日開店

開店

 子供もすなるウェブ日記というものを、私もやってみようかなと、ふっと思ってしまった。
 アンネ・フランクが日記の一ページ目に「紙は人間よりも、辛抱強い」と書いてあったけれど
 はたして、これは、パソコンでも通用するのだろうか。 日本文学の中に一大ジャンルを築いている,日記文学で、辛抱強いのは書き手なのか、読み手なのか。はたまた紙なのか。
 徒然なるままにとにかく、開店してみよう。
 なぜ「麦さん」の日記かといえば、麦は実に排他的な植物である。春先麦の穂が風に揺れている姿はなよやかで美しい。しかしその穂は長くて鋭く硬いひげでまもられている。さわると痛いし。折れた毛が服の中にはいりでもしたら、気が変になりそうなくらいチクチクささる。冬の一番寒い時期を、幼い苗としてすごし、霜柱にさえ根が浮いてしまうから麦踏をする。そして実りの初夏あっという間に刈り取られてしまう。コメと比べてなんとけなげで、潔いことか。私は今度生まれてくる子供には絶対に麦と名付けようと思っていた。その子は生まれる前に、天国にユーターンしてしまった。私は娘が拾ってきたまだへその緒がついていた子猫に麦と名付けて育てた。その麦もいまはいない。
 だから、性懲りもなく「麦さん」の日記であるよ。

 私の日記には生身の人間と同じくらい、生身の生き物がでてくると思う。アシの生えた生き物も土にいきる生き物も、家族という人間も、みな私の御大事だから。