花は咲く

どんなにひどいことがあっても花はその時が来れば黙って咲く。何もなかったかの様に精一杯に咲く。たとえ明日切り倒される身であってもただ満開に花は咲く。近所にやがて切られる大きな桜の木がある。道路のために周りはみな整備された。工事がまだそこまで来ていないのに周りはみな整備され、持ち主の家屋敷も更地になった。せめて今年は咲かせてあげたい。みんなの願いがかなったのか、さくらは咲いた。もうすぐ工事がそこまで伸びてくる。移転の話もちらほら在ったけど、多額の移植費用をだれが出すのか、はたまたあんな大きな木が移植に耐えられるのだろうか。意見はいろいろある。ただあまりの花の美しさに用もないのに何度もその道を通った。出会いというものがある。人にも、生き物にも、そして樹にも。