去年の日記を整理していて

 家族と争った記録がつらいなと思った。何がそんなに激しくぶつかり合った原因だったのかは、もう思い出せないのだけれど、激しい息遣いが聞こえてきそうなその時の怒りの感情は残っているし、相手の言葉の調子や言葉までが再現されてくる。書かずにはいられなかった気持ちがあるだけに、これを書いた時の悲しみは本物だったのだと思う。それでもその大元の原因が消えている。書きたくなかったのだろうと思う。手の中に握りしめて飲み込んだ感情を一冊の日記がそっと包み込んでいる。
 家族はこの記録を読むことはないし、私の心に残した傷など思いもしないだろう。私が死ぬとわかったら、これらはそっと処分してしまおうと思う。残したのがつらい記録であったら、残されたものはたまらないだろう。家族の記録は伝えてはいけないものがたくさん記録されているから。
 書かないで済ますことはできない。言葉に出さないで、相手に伝えないで文字でそっと吐き出すことでしか心の平安は保てないから。