いくら思い悩んでも

　答えが見つからないことがある。答えがわかっていてもそこにたどり着く道が見つからないこともある。そんなときその問いを抱えながら淡々と日常を送る。そして考え続ける。丁寧に日々を送る中で何かがほどけてゆく。そしてポン！と答えが見つかる。

　いくら思い悩んでもその時はいろいろなことが整わないのだろう。その全体のあれやこれやを人間は知る由もない。時が流れると同時に何かが熟成し緩やかに変化し、そしてある瞬間にすべてがカチンと収まるところに収まる。この不思議な技は体験してみればよくわかる。全く説明が不要なくらいに、このことのためにすべてが備えられていたのだと思うくらいに。
　その結果が自分にとって、受け入れ難いものであったにしても、私自身の人生は途切れることなく緩やかな流れに乗って変化し続けていく。そしてある瞬間が来ると、私は自分の人生のその時点までの姿を垣間見ることができる。このことのために、あの日々はあったのかと思う。そしてそれはまた次の何かのための備えであることも知る。
　あらかじめ定められていないことの面白さ。運命という言葉は、もしかしたら「ああこの事か」と思い至ったその感覚なのかもしれない。難しい数式が解けたときのするりとした快感にも似ている。