あえてだまされる

 見え透いた嘘をつかれる。お金をごまかされる。問い詰めていけばばれるなと思うけれど、追い詰めずわかっているけれど、あえてだまされる。そんな駆け引きの大切さをこの年になって飲み込みつつある。弱いから保険金を握りしめてパチンコに駆け込む。すってしまってにっちもさっちもいかなくなって、又ウソを重ねて身動き取れなくなってしまう。そこで締め上げたら、もう破れかぶれになるだろう。それを見越して、あえてだまされて明日に関係をつなぐ。依存症との戦いは、こちらもタフでなければ戦えない。殺さぬように、生き延びる道を探りながらアディクションと折り合いをつけてゆく。
 無力感に打ちのめされるけれど、距離を保って相手の泳ぐスペースを保持しながら、それ以上のめり込まないギリギリを保ち、本人の気持ちを立て直してゆく。気の遠くなるような作業だ。騙されても、裏切られてもあきらめず支える。ただし、おんぶも抱っこもしない。見捨てはしないけれど抱え込まない。