マザーテレサの新刊

 かつてタイムズにマザーテレサは信仰の闇の中に生きていたと特集号が出たことがあった。明るくて自信にあふれて力強かったマザーにそんな弱さを抱えた心の闇があったなんてショックだった。しかし、聖書の中のパウロの書簡の中に「私が弱いときこそ神は強い」という言葉がある。人間が強くて、神を必要としないとき神は静かに見守っておられる。そして人間がもはや自分の限界を悟ったとき、静かに神の手が動かれる。何かをなし続けた人は多かれ少なかれその体験を持つ。

マザー・テレサ 来て、わたしの光になりな

マザー・テレサ 来て、わたしの光になりな

 私たちの人生に同じような暗闇はある。そのことをこの聖女も又体験しておられたのかとより親しくかつ胸に迫るものがある。
 おとといフィールドワークで広瀬川の殉教碑を訪ねた。両手を広げて主の祈りを唱えているパドレの姿とその両脇で祈る武士と農民の姿が、すべての人の姿として表現されている。命を懸けて苦しみに中に信仰を貫く強さと、暗闇に心を置きながらなお、あたかも光の中に生きているかのような強靭な精神力と、なんと同じ色合いの心の風景だろうか。しばし言葉に詰まった。