また見ました

桑畑

 見たくて見たくて東京の岩波ホールまで見に行って、もうこれで思い残すことはないと思っていたのに、当地でやることを知り、まず一人で見に行って、今日は親分と姫と三人で見に行った。都合三回見たことになる。人生にこんな静かな、豊かな時間を持てたことは、神様からのご褒美のような気分。


 言葉を生業にしている私が最も憧れているのはこの沈黙の世界だった。身を焦がすほどほしかったのはこの沈黙の世界だったと気付いた。


 人間の心を言葉を仲立ちとして無意識から意識へと手渡してゆくのが私の仕事。これ以外の生き方を切り捨てて生きてきたと思っていた。しかし、私は本質的には孤でありたい、沈黙の中にこの道を行きたいと憧れていたのだなあ。現実の私は、人の心を的確に感じ取れる言葉を探す旅を続けるだろう。それもまた私の旅の目的でもある。この相反する二つの世界観を併せ持つ自分の姿を感じることができたことは、幸いであったと思う。