イグナチオ教会の

ミラーの向こう

ザビエル小聖堂の水琴窟
暗がりの中に、ひっそりと水の音がする。
気をつけて心を沈めてひたすらに聴く。
心のなかの泉が静かに満ちてゆく時
私の記憶はなだめられ、胸の中に緩やかな水輪になる。


あの日この空間があったら
私はもう少し息を吸うのが 楽になっただろうか
長い溜息がうまく履けただろうか
あの日
この水の音が聞こえていたら、
私の涙はあふれることができただろうか。

飲み込んで飲み込んで飲み込んで
ただ黙らせて来た長い時間
飲み込むことしか許されなかった長い時間
慰められることを求めず
忘れることを拒否し
抱えながら生きること
誰がはめたカセなのだろうか


何が今、この私の胸に満ちてくるのか
言葉を超えて、感覚を超えて夢幻に循環する
思いは言葉を拒否し具象化されることを拒む