姫を見ていると

林の傍を走る

 胸が痛くなる。こんなにも懸命に自分を駆り立てて戦わなければならないのが教職なのかな。中学生は生意気盛り。教育実習生はちょうど手頃な鬱憤バラシ。成績査定に係るわけではなし、どんな悪さをしても一ヶ月足らずでいなくなる。おもちゃとしては最高だ。それでも本人は教育実習で成果を出さねければと懸命に取り組む。何かが伝わるのだろうか。伝わって欲しい。事前に友人に学校の様子を聞いた。荒れているよと言われた。ため息が出る。
 ここだけではない。この街の学校が平安な場所ではなくなっている。荒れているにはそれなりの理由がある。多くの学校の学区は仮設住宅地域を抱えている。津波の被害地域は隣接地域で、あの震災の影響を受けない学校なんてほとんどない。公立校は、校庭に仮設を抱えている。
 沢山の人が流入し、また去っていった地域。子供も大人も口には出さないけれど、様々な非日常の体験をしてきている。そこに、仕事で他地区から入ってくる人間は無傷に見える。いじめや排斥や攻撃がそこに起きてくるのはごく自然の成り行き。道を走っていても接触事故、追突事故が多いと感じる。街が密やかに苛立ちを抱えている。
 あえて、姫に伝えたい。それであっても出会いは出会い。きっとそこに意味がある。君がそこにつながった意味があるのだと私は思う。私もまた自分では決して求めないタイプの人や、環境と結び合わされて、そこでなんとか信頼される関係を作り上げていかねばならず、胃が痛い。仕事というものは自分の都合だけでは決められない。そこに何らかの意味を感じ取らなければやっていけないと思う。
 意味のないことは人生には怒らないのだきっと。