あの雲
お盆にもっともふさわしいのはこの雲だろう。生き物のようにふんわりとらわれて一晩心を支配したあの雲。もしも地獄の釜のふたが開いて、亡者たちがあふれ出してくるのならば、その背景にこの雲は最もふさわしいような感じがする。
もしも、自分にとって愛しい者たちが亡者として現れるのならば、私は見分けがつくのだろうか。ぼんやりとそんなことを思いながら一日の大半を記憶の海を漕ぎ渡っていた。
お盆は何で真夏のこのたまらない暑さの中にやってくるのだろうか。旅をするにも、何をするにも不向きな厳しい季節。それは亡くなった者たちの死後の境遇を分かつためのせめてものことなのかもしれない。
共に痛む・・・・そこに居たいと願う気持ちが、この季節に刷り込まれている。