記憶に食べられる

 心に深く傷を持っていると、現在のこの時を、過去に支配され身動きが取れなくなることがある。トラウマとか、フラッシュバックとかいろんな言い方があるけれど、ようは今の時間を、過去の記憶が食いつぶしてゆく状態。いくら言葉で言ってもたった今、身体は現在に居ても心は過去の時点に戻っている。さあ、心よ戻っておいで。今この身体の居る場所に戻っておいで。その切り替えができないから、カウンセリングが必要になる。ゆっくりと十分悲嘆に浸ってそこから自力で戻ってくるのを待つ。この繰り返しを続けながら、やがて自力で戻ってくることができるようになる。はじめは毎回助けが必要であっても今は何回かに一回は自力で立て直すことができるようになった。大きな一歩だと私は思う。どんなに辛い過去であってもそこに生きてきた自分の姿がある。それは尊いことだ。その自分を抱きしめることができるのは自分自身しか居ない。よく生きてきたねと本当に言えるのは自分だけだ。そのことを今日は二人で味わった。