蚊取り線香

あの匂いをかぐと夏だなあと思う。ベランダを開け放したまま風を入れていたら蚊の羽音がした。あわてて蚊取り線香を焚いた。なんと懐かしい香りだ。しみじみとあの子のことを思い出す。季節の変わり目はことさらにあの子を思う。忘れていないよということなのだろうか。悲しみの中に少しまたわたしは深く心を耕しただろうか。