ドリームワーク

雪のような花

 今日午後からドリームワークの研修がある。夢見手の語る夢の話に同行者が同行して、夢の指し示す物を体験してゆく。フロイト夢分析とは少し違うワークでまだよく飲み込めない。夢見手にならねばならないのだけれど、現実のほうが強くて私はすぐ夢を忘れてしまう。
夢の切れ端
 薄暗い部屋?囲まれた場所に私はいる。空気が流れていないから閉ざされた場所だろう。そこにはうすぼんやりとした光があって、物は見える。まぶしくは無い。音は聞こえないが無音の痛さが無いのでかすかに生活音は聞こえているのだろう。誰かが入ってくる。顔が分からない。女性。彼女は何かはおる物を探している。薄物を着ている。よく見ると入院患者の様でもある。ここは病院なのだろうか?部屋のなかに大きなハンガーラックがあって沢山の羽織のような物がかかっている。色合いが微妙に違うし,生地もまた違う。重かったり、手触りが固かったり、分厚かったり、同じ物がひとつも無い。彼女は一枚をとる。なぜか自分用のものだと分かるらしい。そして羽織ると私のほうを見る。私はそれを確認する係りのようだ。彼女に「確かにあなたの物ですよ」と伝えるそして「あなたの物に間違いないので、大丈夫安心してね。私も私の物を着ていますから、私も同じです。安心してくださいね]という。そこで初めて羽織っている物が衣服ではなく、生きていく悲しみや苦しみのカタチだと気がつく。
 彼女は昨日訪問した末期がんの患者さんだと分かる。彼女はもう一段階深い悲しみの衣に着替えに来たのだ。私はそれを手渡しながら、私もまた痛む者であることを告げる。痛むものでなければこの仕事はできないと分かる。光が少し明るくなる。この場所は暖かい。どこかに窓があるのだろうか。空気が流れている。この場所には安息が満ち溢れているのだと思う。いすに座りなおす。また誰かが入ってくるところで目が覚めた。


 何でこんな夢を見たのか。昨日訪問した時、激しい衝撃に打ちのめされた。患者本人は手術前に告知を受けて自分が癌だと分かっていた。手術ですべて取り去った。放射線治療も、抗がん剤投与もしなくてよい。と告げられたという。その後食べ物が食べられなくなり再入院。今日に至る。本人は抗がん剤を投与されている自覚は無い。食べたくないの?食べてもみな吐いてしまうから。そうか・・・・身体は正直だ。この人にこの先の準備をさせてあげたくても、もう癌は卒業したのだからこの不調は何から来るのだろうかといっている人に、何もできない。
 告知・・・これが告知のあり方だとは思えない。家族がいないから、食べられそうな命のスープも差し入れることができない。私は別の職域で関係しているのでターミナルケアをすることが許されない。悶々として、私は帰り道を間違えた。ふと気がついたら、干潟の傍を走っていた。泣きたかった。何もしてあげられない。何にもできないのか....
 苦しくて苦しくてたまらない。そしてこの夢を見た。同行者であり続けることはできる。せめて見届けることはできる。