恒例の行事

柳と桜

 新入生のほとんどがまだ18歳。先輩たちはもう成人している人が多い。飲み会になって如何になるのか?夜まだバスのある時間にお迎えコールがあった。聞いてみると絶対飲まなかったお嬢さんがひとりいて、なんと言って断ったの?と聞いたら彼女は実に賢い。「お酒は飲んだことが無いので、その気持ちになったら少しなめて見ますね。今はまだこれで。」とジュースをいつも一杯にしてお酒を注げないようにしていたという。無理に飲ませようとしていた先輩も最後には、「無理に薦めてごめん」といったそうな。そののんびりとした穏やかな空気に私は拍手したくなった。ほろ酔いになっていつもより饒舌だった件の姫は、自分の中で折り合いをつけながら会話を楽しむ事ができたらしい。人見知りがあって自分から友人関係を作れない彼女が高校までの教訓を生かして、それこそこれで失敗したら四年間地獄くらいの気合で臨んだらしい。
私たちの年代は、一匹狼でいることがむしろ主流で、つるむ連中は個の自覚が無いと思われていたふしがある。ロンリーでありハングリーであることが大切だった時代から、今、若者文化は仲間であり、関係性の中で作る物であり、絆重視であり、孤独や孤立は生きることをつらくする主要素になっている。だから新入生歓迎会までに同じ科の新入生同士の信頼が取れていて、さらに先輩との関係を結ぶことが必要になっているらしい。まるで儀式のようだが、個の延長線上に公園デビューだの○デビューだのと大騒ぎする姿があるのだろう。疎外感、孤独感は忌むべき物であり、罰のように感じられている。引きこもりになることはそれゆえに、自らの生を閉ざすことにもなりかねない。こんなにも生き難く、自己規制のきつい生き方を選ばなければならないこの社会はゆがんでいると思うのだけれど。