手の中で

 手洗いしている姫の制服のブラウスが手の中で静かに裂けていった。襟のすぐした。肩のところからほろほろと裂けた。これで二枚目だ。糸で修理しながら三年間着続けた白いブラウス。襟に学校のロゴが刺繍してあるのでブリーチできない。毎回手のひらで包むように優しく洗って三年間着た。土曜日も休みではなかったし、長い休みもほとんど無かったからほぼ毎日このブラウスを着ていたことになる。4枚買って一枚は何かのときにとそのままに、後の三枚を繰り回してきた。一枚はすでにひじが切れてしまい胸ポケットとボタンをはずして廃棄した。今日また一枚駄目になった。後一ヵ月半。最後の一枚をおろしてしまおう。手の中で薄くなった肩やひじをなでさすりながら丁寧に洗い上げた。親が知らない学校での生活を共に過ごした制服とももうすぐお別れ。なんだかほろりとするよ。