なんとかならないのかなあ

 だけど、心の隅に最早ひとり暮らしが出来なくなってしまった〇さんの昨日の姿がある。自分が何故救急車や警官に囲まれているのか最早記憶がない。どうやらまた行き倒れたらしいけれど、何が原因だったのかも分からない。脳梗塞をやっていると脳の機能が急に衰えることがある。どこかでカバーしているけれど、ある日それがもはやカバーしきれないほど衰えが進むと一気に認知症が進んだように周りは思ってしまう。事実はその人なりの必死の工夫や努力が支えていた部分があってそれが最早かばいきれなくなっただけのことなのだ。その時本人はまずとてつもない不安に身を晒すのだろう。何が起きているか分からない自己不全感。自分と回りの間にある不一致感。助けてと叫びたいほどの不安なのだろう。私を見た瞬間のおびえた表情、そして別れるころに見せた穏やかな笑顔。これから関係機関は必死で〇さんの入れる施設を探す。それまでの間はヘルパーと、デイサービスを利用できる限り利用して何とか凌いでゆくのだろう。私を噛んだ猛猫君は昨日はコタツで丸くなって寝ていた。引き取り手はいない。たった一人の家族だったのだけれど連れてゆくことは出来ない。胸が痛い。