仕事でKちゃんが来る

ベランダ・ローズゼラニュウムと山芋

 お互いに忙しくてなかなかゆっくりと時間が取れないが、無理をしてでも会いたい。今回も彼女の仕事が終るのは九時ころになるけれど、ホテルで会おう。ママのことや、自分達の抱えているものや、話したり話さなかったりする沢山の想いをお互いの胸にそっとゆだねる。随分長い間離れ離れに生きてきた姉と妹。それぞれの環境の中で心がいつの間にか寄り添っていた。人生って不思議だなあと思う。一緒に旅をしてみたいなと思うことがある。どこかの国の古い街の中を歩いてみたいな。古い街の中に流れている時間の記憶を手探りしてみたい。文化圏が違う方がいいかもしれない。私は異邦人という言葉が好きだ。どこか不安げで寄る辺なく、その足跡だけが自分の物。そんな光景はどこか私自身の幼いころの感覚に似ている。振り返ればいつもその心の風景の中にいた。大人になって自力で自分の居場所を作ってきたけれど、疲れてくるといつもあの見知らぬものの中にいるエトランゼ感覚が湧き上がってくる。それは決して嫌な感情ではない。ふつふつとこみ上げてくる涙ぐみたい思いは愛しさに繋がる。私はその風景の中で神に出会った。まさにクオ・ヴァディス・ドミネだったから。私はこの光についていこう。確かなもの、揺るぎのないものにはじめて触れた確信。その記憶が今の私の生き方の原点にある。