お風呂にゆったりと入れる幸せ

 柚子のタブレットをポチャンと入れてゆっくりと溶けてゆくのを楽しんだ。たったそれだけのことで心も身体もほぐれてゆく。今日離婚した人と会った。激しく生きることではなく穏やかにいきたかっただけなのに何故かそれが叶わなかった。その心の痛みを抱えてなお静かにここに居られることを楽しんでいる。人間は思いもかけない強さを持っている。私も自分自身を強いと思った。自分が壊れないだけえらいと思った。そう思えることでたくさんのことを許してきた。
 穏やかであれ。暖かくあれ。静かに静かにそこに居ることがどれほど難しいことか。当たり前の人の強靭さに圧倒される。際立って強いものだけが評価されるのではない。ひたむきに日々の営みをまっとうに生きるものの強さこそ本物だと思った。
 離婚してたった一人で生きていくのは生易しくはないけれど、そのことができるまでに自分を取り戻したことが彼女を美しい女にしていた。これからの人生が豊かでありますようにと心から祈って別れた。
 女はいくつになってもその年代にふさわしい輝きを持つものだと思った。私もそういう女になりたい。女に生まれたことが少女のときは悔しかった。今誇らしく思う。そんな生き方ができたのは親分の支えがあったからだ。彼に受け入れてもらい、彼に認めてもらうことで私は未熟な少女時代を克服できたのだと思う。「愛するということはその人の可能性を受け入れ、信じ、支えていくことだ」と、神谷は言ったが自分の人生を振り返って私は実感を持って思う。愛する相手の、人としての成長を支えることが素朴な愛の行為であるのだと。