引越し日和

社宅のいたるところに数台のトラックが止まっていて次々と荷物を出している。そうだ今日は土曜日、引越し日和なのだ。ゴミ置き場は残留組がゴミを出すのがはばかられるくらい盛大にゴミが出ている。昨日まで正直ゴミ集積場に住むことが出来るのではないかと言うくらい家財が廃棄されていた。身一つで転勤ですかと思うくらい、何もかも捨ててあった。今まで自分の引越しで夢中だったからよそ様の引越しは余り気をつけてみたことはないが(手伝いと言っても事後の掃除くらいだったから)こんなにも振り落として行くものなのだと唖然とした。
 よし私も残った時間を徹底的に整理に回そうと思った。気持ちがすとんと治まった。その目で見ると家の中には何と捨てていいものが沢山あるではないか。嬉しくなった。物からの自由。過去からの自由。もう誰も私の生活に残骸を持ち込むことはないのだという安堵感。思い出の品々は十分お預かりはした。後は私の人生なのだと割り切ってもいいのだ。今年の四旬節は痛みに満ちていたが、あと一週間。身軽になることを考えたら心が軽くなった。過去から解放されることがこんなにも嬉しいことなのかと思った。