震災後訪問開始

この災害が、心にもたらした影響は思いのほか大きい。認知症の進みが速くなった人、精神の不安定さの程度が増し、DVを引き起こして家族に怪我をさせてしまったなどなど・・・
 面接していても、感情の起伏が激しいのを感じる。健康な人でさえ、ひっきりなしの余震と、緊急地震速報と其のたびに「身を守ってください」という呼びかけに緊張する。ドキドキしてキリキリして一日が終わるころにはぐったりしてしまう。
 なかには精神が高揚して、周りの人とかみ合わなくなってトラブルを起こす人も出てくる。避難所を片っ端からはしごして、それをルポして周りのヒンシュクを買う人もいる。この人にすればいつもと違うことが起こって、わくわくしてしまっただけなのだが。
 ただでさえ不便な生活にイラついている周りの人にしてみれば「このお調子者が」と疎まれる。どちらの気持ちも判るだけに思わず「まあまあ」といいたくなる。
 今日はたくさんのさまざまな障害を持った人と会って、いっぱい話を聴いた。彼らの多くは、気持ちの変化に戸惑い、それを伝えることが出来ず、ただじたばたすることしか出来ない。其の切なさを、なかなか周りの人も受け止めることが出来ない。だって其の人たちも今は被災して一杯一杯だから。この人たちにとって日々の暮らしは今まで以上に厳しいだろうと思って帰ってきた。

気持ちが重かったので

姫とカメラを持ってぶらりと散歩に出た。まず久しぶりに開いていたミニ・ストップで肉まんを買った。お昼を食べ損ねていたので、歩きながらうまうまと。
 姫と四文字熟語しりとりを延々とやる。住宅地で開いていたドラッグストアで風邪薬を購入。姫は粉剤を飲めないので彼女用に錠剤を購入。私がお気に入りの、和漢薬の歯磨きを見つけて購入。なかなか売っていなくて困っていた。ビスケットとチョコも購入。ホットアイマスクを見つけた。なかなかよさそう。使ってみてよかったら避難所の友人に送ってあげようかと思う。
 何となく歩いていったら、この前並んだガソリンスタンドが営業していた。思わず「通常営業ですか?」と聴いたら「今日から夜九時までの通常営業です」というではないか。やれ嬉しや。これでガソリンを心配しないで車を使うことが出来る。今まで心配で仕事以外で車を使わなかった。
 デジカメで道端の草をとりながら帰り道。これぞ道草ってか?
土筆、なずな、オオイヌノフグリ、勿忘草、フジバカマ、はこべ、たんぽぽ、一杯咲いている。気付かなかったけれど、気付かなかっただけなのだなと、通りかかったサラリーマンと「うれしいね」「うん、なんだかうれしいね」と言葉を交わす。地震以来何気ない会話を道行く人と交わすことが多くなった。何となく同じ困難の中にいるもの同士という感じかな。
 帰り道のマーケットでお肉と冷凍饂飩と卵を購入。買出しなんだか散歩だかわからないような、ホンワカした時間を過ごしました。四文字熟語は行き詰って、その後カタカナしりとりになりましたとさ。

倒産

 夕方のニュースでスナフキンの同級生のおうちが経営していた会社が倒産したことを知った。私の友人の会社も取引先が津波被害の地方に多いので、これから危機的な状況になるだろうといっている。あっちでもこっちでも似たような話を聴く。津波で直接的被害は無くても連鎖的に経営危機に陥る企業は多いだろう。基盤がこの土地にある地場企業はこれからどうなるのだろうか。
 今回の災害は二重三重に困難が押し寄せてくる。どうやってこの中で心のケアをしていけばよいのか・・・・・幾層にも重なったこの困難は独りの人間が背負っていくには重すぎる。背骨が折れそうだろう。聴くことの果たす役割は、その背骨に手を添えること。無力であってもその手を放すことはしない。